教科書の裏を確認すると、やっぱり花江くんの名前が記入してある。ということは、わたしの教科書はあちらにあるはずだ。

しかたない、明日彼のクラスに行こう――そう考えたと同時に、花江くんの顔が脳裏に浮かんだ。

不純物なんか一切混じっていないような、澄みきった笑顔。
いったいどんな風に生きてきたら、あんな笑い方ができるんだろう。


わたしは花江くんの教科書の間から、手紙を取り出してみた。

白い封筒は紙が劣化してかすかに黄ばみ、所々やぶれかけている。あて名の欄は空白。

そして裏面の差出人の欄には、ほとんど消えかけの文字で“水原香澄”と書いてある。

みずはら……誰かな。
もしかして花江くんの彼女?

だとしても全然不思議じゃない。花江くんみたいな人に彼女がいるのは当然だから。