「たしかにホタルはちょっと面倒くさいやつだけど、負担ってわけじゃないですし。それにわたしも、少しでも協力したいんです」
蒼ちゃんの友達として。そう付け加えると、おばさんはうつむき加減で微笑んだ。
「ありがとう。わたしの方もね、蒼の主治医だった先生に連絡をとったの」
「え?」
「今の状況を相談したら、先生がこの近辺でいい病院を探してくださるって。蒼本人はまだホタルの存在に気づいていないから、まずは専門家の指示を仰いだ方がいいだろうし」
「それって……また治療を受けるっていうことですか?」
おばさんが静かにうなずく。
「病気が再発したのなら、治さなくちゃね」
「そう、ですよね」
わたしは歯切れ悪く同意して、目をそらすように花びらをゴミ箱に捨てた。
“病気”という単語がホタルの存在そのものを指すのだと、頭ではわかっていても違和感が渦を巻く。
だって、ホタルはひとりの人間としてわたしの前に存在していて。
悪態をついたり、時に強がったり、ハンバーグがお気に入りだったり。
わたしたちと同じように普通にこの世界に“いる”のに……。