『まあたしかに、これは勉強だけはそこそこできるからな』
おじいちゃんの満足げな様子を思い出すと、不快な気分になるのに、心のどこかではホッとしている自分もいる。
悔しいけれど、あの人の機嫌を損ねたらここでは生きていけないから。
海と山しかない田舎町のこの家で、わたしはおじいちゃんとお母さんとの3人暮らし。
小5のときに両親が離婚し、お母さんの実家に戻ってきたのだ。
家の独裁者であるおじいちゃんは、地元特産物を使った加工食品の製造販売業を営んでいる。
ひいじいちゃんの代では小さな商店だったのを若くして継ぎ、今では県外のデパートなどにも出店する、それなりの会社に成長させた。
そんな自分ヒストリーがあの人のご自慢だ。
お気に入りの社員を自宅に招いて、今日みたいに宴会を開くのもあの人の自己満足。そのたびにこき使われるわたしたちの苦労なんか、これっぽっちも考えていない。
いや、考えてはいるのか。
“居候だから当然だ”って。