「おーい、ビールが足りないぞ」


怒鳴るような声が和室から響いた。


「すみません! すぐに持っていきます」

「わたしが行くよ」


お母さんを遮って、冷蔵庫から瓶ビールを6本取り出してお盆に乗せた。なかなかの重さだけど、もう慣れっこ。バランスを崩さないよう注意しながら運んでいく。


和室のふすまを開けると、大勢の男性たちがすでにお酒で顔を赤くしながら談笑していた。

その上座でふんぞり返っているのは、今年61歳になるうちのおじいちゃんだ。


「おっ、真緒ちゃん。久しぶりだね」


わたしに気づいた乾さんが声をかけてくる。おじいちゃんの会社に務めている、40代くらいの男性。
やさしい人だけど、どことなく胡散臭い感じがして正直あまり好きじゃない。

ビールの栓を抜いていると、おじいちゃんがギロリと睨みつけてきた。