「あの人、さっきからずっと校庭見てない?」

「カメラ持ってるよ。あやしいよね」


廊下側のわたしの席からは外の様子が見えない。
だけど彼女たちの言葉から推測すると、校庭のまわりにカメラを持った不審人物がいるらしい。

……カメラって。まさか。




「凪さん!」


チャイムが鳴ると同時に、校庭のはしっこまでダッシュした。
わたしに気づいた凪さんが、フェンスごしにひらひらと手を振っている。


「やあ、真緒ちゃん」

「ダメですって凪さん! 不審者だと思われてますよ!」

「えー、そうなの? まずいな」


呑気な口調でからからと笑う。こんなに人のよさそうな不審者がいたら、それはそれで怖いと思う。

とにかくこの位置は校舎から丸見えなので、中庭の方へと移動した。
フェンスのあっち側とこっち側を、同じ速度で歩いていく。


「凪さん、蒼ちゃんに用があって来たんですか?」

「いや。高校生活っていいなあと思って見てたんだ」