『それって東京に行かなきゃダメなわけ?』

『蒼の母親が育った場所はわかってるんだ。周辺を探れば何かつかめるかもしれない』


たしかに。こんなところでうだうだ調べているよりは、現地に行く方がよっぽど早いだろう。

ホタルをひとりで行かせるのは危険すぎるから、わたしも同行するのは絶対条件。
けど、4万円って……。


『そんなに悩むところか? 金なんかそのへんに、いくらでもあるだろ』


ホタルの視線が、通りかかったサラリーマン風のおとなしそうな男性に向いた。


『バカ! 蒼ちゃんの体で変なことしたら、二度とハンバーグ作ってあげないからね』


むう、と唇を曲げつつも、おとなしくなるホタル。
なんだか餌付けしてる気がしなくもないけど、切り札になるものは遠慮なく使わせてもらおう。