「な、何、怒ってんのよ……!!」


「……チッ、」



突然怒鳴られたアユちゃんも、驚いたようで声にいつもの勢いはない。


それでも蓮司は悪びれる様子はなく、ただただ苛立ちだけを全身で表していた。


……だけど、どうして蓮司がこんなに怒っているのか、私にもわからなくて。


確かに先輩のことは二人には話していなかったけど、それは先輩との時間を、なんとなく。


なんとなくだけど、未だに夢を見ているような気持ちで過ごしている自分がいるからだ。



先輩と一緒に図書館を出たあの日から、本当にごく稀にだけど放課後あの図書館で会うことはあった。


けれどそれは本当に偶然で、先輩と示し合わせて会っていたわけじゃない。


先輩から、必要以上の連絡が来た事だってない。


だからこそ私は……、朝のあの時間だけが私と先輩を繋ぐ唯一の時間だと思っていた。


今の私にとって、先輩と過ごすあの穏やかな時間は、とてもとても大切な時間だった。


……そして、そんな風に思うのも。


多分私が、樹生先輩のことを好きだから、だろう。


優しくて、気遣い上手で、温かい先輩のこと。


私は、そんな樹生先輩に恋をしているんだと、そう思う。