「でもさ、残りの高校生活が受験一色で終わるのって、勿体無い気がしない?」
「(はい……)」
「まぁ、そんなこと言ったら真面目に将来を見据えてる奴らには怒られそうだけど」
緩く喉を揺らして笑う先輩は、どんな未来を描いているのだろう。
そう思って、再び先輩の横顔を見上げれば、私の視線に気付いた先輩は一瞬困ったように笑うと、再び前を向き、静かに口を開いた。
「……俺の父親、医者なんだ」
「(……え、)」
「だから、俺も受けるのは医大」
「(い、医大って……!)」
「……将来は、イケてるお医者さん?」
おどけたように笑いながら、平然とそんなことを言う先輩に、思わず私は固まって目を見開いた。