「(いつも一人で帰ってるのは、一人で図書館を出るからでしょ?今日は一人じゃないし、俺が送りたいと思ったから送らせて)」
「……っ、」
「(冗談じゃないよ。悪いけど、しつこいって思われても、これは譲らない)」
それを読んでから顔を上げれば、何故だか真剣な表情をした先輩と目が合った。
思わず息を呑めば、今度は筆談ではなく、ゆっくりと口を開いた先輩は、
「……今度から、一人で帰るときはもう1時間早く、図書館を出ること」
「っ、」
「可愛い子がこんな時間に一人で歩いてたら、心配だから、ね?」
そう言って、頭の上にポン、と乗せられた手の平に高鳴る鼓動。
(か、可愛い、って……い、今、私のこと、可愛いって……)
「……わかったら、返事」
「(は、はいっ!!)」
コクコクと必死に頷けば、「よろしい」と綺麗に笑った先輩。
急いで荷物をまとめて図書館を出ると、先輩の言う通り、外はすっかりと夜に染まってしまっていた。