「……いつも、勉強ここでするの?」
「(はい……っ。テスト期間になると、よく来ます。あ、それ以外でも、本を借りに来たりします)」
図書館内なので、声を最小限まで落として話す先輩。
その色気たっぷりな声に鼓膜を揺らされて、思わず顔が熱を持っていくのがわかった。
「(先輩も、勉強ですか?)」
「うん。ほら、俺、一応受験生だから」
「(そうですよね、すみません、変なこと聞いて……)」
戸惑いを誤魔化すように、携帯電話ではなく開かれたままのノートに先輩への返事を書いていく。
携帯電話程ではないけれど、失声症のせいで文字を書く速さも他の人よりは随分速い。
「……、」
「(えっ、)」
すると、何を思ったのか。
不意にペンを持った先輩が、たった今私が書いた文字の下へと何かを書き出したのだ。