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「─── 樹生、本当に、これでいいの?」
窓際の席に腰を降ろしたまま、とっくに駅の方へと消えた栞の背中の残像を眺めていた俺に、アキの切なげな声が掛けられた。
「いいんだ、これで。俺に関わらなければ、栞もきっともう傷つくこともないだろうし」
そんなアキに視線だけを向けてそう言えば、今度は眉根を寄せて俺へと強い目を向ける。
「……それ、本気で言ってんの?この間の一件は、別に樹生のせいじゃないじゃん。あいつが勝手に嫉妬して……勝手に、栞ちゃんの噂を流しただけだろ?」
「うん、そうだね。だけど、俺に関わらなければ栞は噂を蒸し返されて、あんなに傷つくこともなかった。それは事実だろ?」
「だけど……栞ちゃんはきっと、そんなこと気にしてないよ。今だって、樹生のこと本当に心配して、一言でも謝りたいって……」
「……ほら、それも」
「え?」
「俺が停学になって大学の推薦が取り消しになったことも、栞は全部自分のせいだと思ってる。
あれは、俺が衝動的に起こした問題で、栞のせいじゃないのに……栞は、自分を責め続けてる。
今、会ったら、アキの言うみたいに栞はきっと俺に謝り続けるよ。
そんな栞に、大丈夫だから、気にするなって言ったところで、優しい栞は責任を感じたまま。……結局、今会って俺が何を言ったところで、少しも栞の救いにはならないから」