駅から学校までは、歩いてもそう遠くはない。


朝も早いこの時間、同じ方向へと向かうのは部活動で朝練のある下級生や、俺と同じように大学進学を目指す受験生のみ。


同じように門を潜り、それぞれが目的の場所へと散っていく様子が、毎朝繰り返される。


と。

昇降口でこちらを見ている、見慣れた姿を見つけた俺は、その相手の視線に答えるように軽く手を挙げた。



「樹生っ!おはよう!」


「アキ、おはよ。今日は早いじゃん」



朝が良く似合う、爽やかな笑顔を見せながら手を挙げるアキに、小さく笑みを返す。


すると、アキの隣にいた見慣れない先客は、アキと一言二言言葉を交わすと、俺とは特に会話をすることもなく校庭の方へと歩いて行った。