ずっとずっと着たくて、でも、ずっとずっと着れなかった浴衣。
大好きなおばあちゃんから貰った、大切な浴衣だ。
だから、先輩がお祭りに行こうと言ってくれた時は、本当に本当に嬉しかった。
そして、それ以上に大きな不安も抱いてしまった。
先輩は大丈夫だと言ってくれたけど、やっぱり迷子になったら想像以上に迷惑を掛けるだろうし、先輩に煩わしい思いだけはさせたくなかった。
でも正直、そんなことも気にしている余裕もない程、大好きな先輩と初めてのデートかと思うとやっぱり緊張で、どうにかなりそう……なんて。
「……可愛過ぎて、一瞬、誰かわかんなかった」
ううん。間違いなく、どうにかなってしまうと思う。