「俺は、栞の思ってることを知りたい。遠慮とか我慢とか、そういうのはいらないから、栞の本音を聞かせて」
「(……せん、ぱい)」
「はい、携帯持って。思ってること、全部打って」
「……っ、」
その言葉に、一瞬躊躇した栞も覚悟を決めたのか、携帯で言葉を綴り始めた。
「(……声が出なくなる少し前に、)」
「うん?」
「(声が、出なくなる前に、おばあちゃんが浴衣を縫ってくれて……本当は、それを着てお祭りに行くのを楽しみにしてました)」
「……そっか」
「(でも……やっぱり、一緒に行ってくれる人に迷惑を掛けるのは心苦しいし、煩わしいって思われるんじゃないかって……怖くて。だから、先輩にも迷惑を掛けるのは、申し訳ないです……)」
「へぇ……。栞は、俺がそんなことを迷惑だなんて思う、ちっちゃな男だと思ってるんだ?」
「(そ……そうじゃなくて!正直なところ、自分でも何処までが大丈夫かとかわかってない部分がありますし、それに……)」
「それに?」
「(い、樹生先輩は、お祭りとか嫌いそうですし……)」