だけど、そんな当たり前ばかりを増やしていったら、栞はこれから今以上に多くのことを我慢し、諦めなきゃいけなくなる。



「……行けてなくて、ってことは、行けるなら行きたいと思うってことだよね?」


「……っ、」


「じゃあ、今年は夏祭り、一緒に行こ?」



尋ねれば、弾けるように顔を上げた栞は目を見開いて俺を見つめる。


その反応を見ただけで、たった今自分が想像した答えが確信へと変わった。


そして、俺の誘いに戸惑っている栞が考えていることもわかる。


……健気だな、と思う。

そんな小さな願いくらいだったら、いくらでも叶えてあげられるのに。


俺を見上げたまま再び困ったように眉を下げる栞を見てそっと目を細めれば、そんな栞もまた、俺の言いたいことを悟ったのか、その綺麗な瞳を潤ませた。