「栞は祭りとか、行く予定は?」



聞いてから、すぐに後悔した。

何故なら俺のその言葉に、一瞬驚いたような表情で俺を見上げた栞が、すぐに繕うように眉を下げて笑い、携帯へと視線を落としたから。



「(予定はないです。というか、しばらくそういうところには行けてなくて)」



……そんなの、わざわざ栞に言わせなくたって、少し考えればわかることだった。


もし祭りに行ったとしても、人混みに紛れて友達と離れてしまった時、すぐに声を出して相手を呼ばないと、あっという間に迷子になってしまうこと。


そうなると、栞のことだから“相手に迷惑を掛けたくない”……なんて考えて、例え祭りに行きたくても断るだろう。


そして、そういうことを繰り返している内に相手も栞に気を使って誘わなくなるものだし、栞自身も当たり前にそういう場所を避けるようになってしまったんだろう。