「我々の上位組織に、リサイクル部門があってな、正しく終わった魂は、そこで加工され、また使われる」

「魂って再利用できるんですか」

「正確に言えば、再資源化だな、一度溶解するから」



紙か。



「じゃあもしかして、前世の記憶とかって、本物なんですね」

「リサイクル担当者が雑な仕事をすると、そういう不具合も起こる。それを防ぐために、オートメーション化が叫ばれている」



環境の授業みたいになってきたな、と聞いているうちに学校が見えてきた。



「魂が漂うのは、まずいんですか」

「彼らをゼロからつくりだす技術はまだないんだ、だから回収できないと、次に回す資源が枯渇する可能性がある」

「そうすると、まずいんですか」

「いい質問だ」



得意げな声。



「枯渇したらまずいのか、そもそも本当に枯渇するのかすら、誰にもわかっていない」

「ははあ」

「だが誰もがなんとなく、それを恐れている。お前たち人間が、天然資源の枯渇を、真偽もわからないまま恐れているように」



なるほどね。

石油がいつかなくなると世界中が震撼してみたり、専門家が、それはデマだと言ってみたりする、あれか。


そして危機意識のあるところには、ビジネスが生まれる。

浮遊してしまう魂を減らし、リサイクル率を上げるために、伸二さんたちみたいな職業が必要とされたってことだ。

命の尊さという考えが、バカバカしいのか言いえて妙なのか、わからなくなってきた。



「何か思いついたら言え、たいていのことは実現してやれる」

「実現が難しいのは?」

「誰かを巻き添えにするとかだな。──の新規作成は、実はそこそこ厄介なんだ、決裁ルートも違う」



何か一部、翻訳しきれなかったのか、不鮮明で聞きとれない部分があった。

たぶん、案件、みたいな意味なんだと思う。

つまり、ひとりの人間が消える予定を、別の人の希望によって決める、みたいなのは難しいってことだろう。