バスがキャンプ場に着くと、すぐに昼食作りが始まった。


調理場が何十もあり、学年の生徒全員がそれぞれの場所に陣取ると、ざわざわと動き始めた。

かまど係が薪を取りに行き、調理係は水場に立つ。


私と梨花ちゃんと、他の女子一人、男子二人が調理係で、それ以外のメンバーはかまど係。

葛西くんもかまど係で、「うまくいくかなあ」と不安そうに呟きながら、キャンプ場の人から薪をもらって戻ってきた。

それから軍手をつけ、かまどに薪を並べている。


それを横目に見ながら私は、貸し出しの包丁とまな板を軽く水ですすぎ、人参を手に取った。


刃を当てて人参を回し、くるくると皮を剥いていたら、突然、


「おおっ、すげえ!」


という声がすぐ側でして、私は驚いて手を止めた。

見ると、隣に葛西くんが立っていて、私の手もとを見ながら目を輝かせている。


「すごいな、霧原さん。包丁めっちゃ上手じゃん!」


きらきらした表情で言われて、途端に恥ずかしくなり、私は視線を落とした。


「そんなこと、ないよ……」


小さな声でぼそぼそと答える。

梨花ちゃんや嵐くんとは普通に話せるようになったけれど、他の人と話すときにはやっぱり緊張してしまうのだ。

自分の人見知りの激しさに、我ながら呆れる。


葛西くんがせっかく声をかけてくれたのに、こんな反応をしてしまって、気を悪くしたんじゃないだろうか、と不安になった。