梨花ちゃんが不思議そうに首を傾げて言うけれど、雪夜くんは「なんとなく、たまたまだよ」の一点張りだった。


「ふうん……まあ、いいけど。じゃ、美冬は?」


急に順番が回ってきて、私はなんとなく慌ててしまう。


「え? ええと……私はね、」


答えかけて、はた、と詰まった。

そこから先の言葉が出てこない。


あれ、なんでだっけ、と心の中で自問自答する。

私、なんで、清崎高校を選んだんだっけ?


「……忘れちゃった」


どうしても思い浮かばなくて、私は結局、ごまかし笑いを浮かべながらそう答えた。


「えっ? 忘れちゃったの? まだ半年も経ってないのに」


梨花ちゃんが目を丸くしていた。


自分でもそう思うので、「だよね」と私は苦笑する。

受験からまだ三ヶ月も経っていないというのに、志望動機を忘れてしまうなんて。


「ええ、なんか意外だなあ」


と梨花ちゃんが明るい笑い声をあげる。


「美冬ってしっかり者でちゃんとしてるから、志望校決める時とか、すごくしっかり考えてそうなのに。忘れちゃうなんて、ほんと意外」

「なんか、ごめん。本当に思い出せなくて」


えへへ、と笑ってごまかしていると、突然、


「そういうこともあるだろ」


と声が聞こえた。

唐突に口を挟んできたのが雪夜くんだと気づいて、私と梨花ちゃんは同時に口をつぐみ、彼を見上げた。