「だって、滝川は遠いから通学に時間も金もかかるしさ。それに、陵明館なんて私立だから学費バカ高いし。だから俺的には選択肢には入らなかったんだよな」


梨花ちゃんは、なるほどね、と頷いてから、「そういえばさ」と何かを思いついたような表情で言った。


「みんな、なんで清崎を選んだの? せっかくだから聞きたいな」


まずは、嵐くんが答える。


「俺はまあ、家から通いやすいっていうのと、あと、うちの父さんと母さんがここの出身だから、同じ高校に行くと喜ぶかなって思って」

「へえ、親も清崎なんだ。なんかすごいね、親が喜ぶからここにしたって」

「まあ、色々と世話になってるからさ」


嵐くんの言葉に、私はなんとなく引っかかりを覚えた。

普通、高校一年生の男の子が、『親には色々と世話になっている』などという言い方をするだろうか。

嵐くんはこの年頃の男子にしては落ち着きがあって大人びているけれど、それにしても意外な言葉だった。


次に梨花ちゃんが答える。


「私は、まあ、学力的にも地理的にも妥当かな、ってことで選んだ感じ」


それから、「雪夜は?」と訊いた。

雪夜くんは、興味も関心もなさそうな表情で、「べつに……」と答えただけだった。


「えー? なんかあるでしょ、理由。そんなに近くもないし、難易度的にも合ってないのに。何かあったんじゃないの?」