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待ち合わせ場所に着くと、まだ誰も来ていなかった。
腕時計の針が示している時間は、9時45分。
「さすがに早かったかな……」
と自分で苦笑してしまう。
楽しみにしていたせいか、もっと朝寝してもよかったのに、6時前には自然と目が覚めてしまった。
ゴールデンウィークでも仕事に行くお父さんと部活がある佐絵のお弁当を作り、お風呂掃除をして洗濯物を干して、家中に掃除機をかけて、それでもまだ時間が余っていた。
家で待っていてもなんとなく落ち着かなくて、結局は早めに出てきてしまったのだ。
みんなが来るまで本でも読んで待っていよう、と思い、邪魔にならないように改札横の柱のかげに入った。
柱に背を預けて文庫本のページをめくっているうちに、気がつくと10分ほどが過ぎていた。
そろそろ誰か来るかな、と思って、何気なく改札口に目を向ける。
ちょうど電車が到着したところだったのか、たくさんの人たちが改札機に向かって早足で向かってきていた。
人波が過ぎたころ、集団とは離れたところをゆったりとした足どりで歩く、ほっそりと背の高い姿が目に入った。
「あ……雪夜くん」
思わず声を洩らすと、彼の目がちらりとこちらに向けられる。
一瞬、意表を突かれたように動きを止めてから、雪夜くんは改札機を通り抜けた。