「ただいま」


玄関の鍵を開ける音がして、お父さんが帰ってきた。


「おかえり」


キッチンから顔を出して迎えると、お父さんが「ん?」と首を傾げた。


「どうした? 美冬。なんか良いことあったのか?」


その瞬間、ごはんをよそっていた佐絵が噴き出した。


「あはは、うける。私もさっき同じこと言ったの!」

「そうなのか。いや、なんとなく、なんだけど」

「分かる分かる。なんとなく嬉しそうだよね、お姉ちゃん」

「だよなあ」


二人にまじまじと見つめられて、いたたまれなくなる。


「もう、その話はいいから。ごはん冷めちゃうから、早く食べよ」

「はあい」


肉じゃがを皿に盛りつけて、テーブルに運ぶ。

洗面所に入ったお父さんが戻るのを待つ間に、スマホを開くと、嵐くんからラインが来ていた。

『嵐です。これからよろしく』

少し悩んでから、『霧原美冬です、よろしく』と返した。


つい一時間ほど前には梨花ちゃんからメッセージが送られてきていた。

高校に入ってからは、家族としかラインをしていなかったのに、今日一日で、二人と連絡をとりあっているなんて。


「すごいなあ」


しみじみとつぶやくと、テレビを見ていた佐絵が「なにが?」と振り向いたので、「なんでもない」と首を振る。


そのとき、またスマホが震えた。