「……やばい! 美冬の発言、いちいち可愛すぎる!」


梨花ちゃんが叫ぶように言って、私を抱きしめる腕に力をこめた。

家族以外に抱きしめられるのも初めてなので、なんだか緊張してしまい、呼吸の仕方も分からなくなりそうな気分だった。


助けを求めるように視線を動かすと、雪夜くんと目が合った。

雪夜くんはいつものようにふいっと顔を背ける。

その肩をつかんだ嵐くんが、


「おい、雪夜。美冬、あんなこと言ってるぞ? 萌えるなー。お前、どう思う?」


とにやにやしながら言った。


すると雪夜くんは思いきり顔をしかめ、「うざい」と呟く。

それを聞いた瞬間、心臓が凍ったような気がした。

私にも向けて言ったのだと思った。


ショックで思わず俯くと、すぐに雪夜くんが気づいて、「あ」と声をもらす。


「……馬鹿、勘違いすんな。お前に言ったんじゃない。嵐に言ったんだよ」


と、私を見ずにぼそりと言った。


「えっ」と声をあげたけれど、それきり何も言ってくれない。


「なんだよ雪夜、そこで黙るなって」

「うるさい」


雪夜くんは嵐くんの言葉を遮り、唐突に「帰る」と席を立ち、教室を出て行ってしまった。