「どのあたりなら集まりやすいかな。やっぱりA駅?」

「でも、それだと美冬が遠いだろ」

「あ、そっか」

「学区が違うからな」

「高校ってみんなばらばらのところから通ってくるから、遊ぶ場所決めるのも大変だね」

「だよな。てことで、場所はやっぱこのへんが一番いいだろ」


二人がああでもないこうでもないと話し合っている間、雪夜くんは他人事のように教科書を読んでいた。


ノートに長文読解の英文を写していた私は、何気なく雪夜くんに目を向けて、その横顔を見つめる。

雪夜くんは、数学の問題集を解いている最中だった。

長い前髪が顔の上半分をほとんど隠してしまっているけれど、真剣な表情をしているのが分かって、なんだか微笑ましい。


雪夜くんの背後には窓があって、赤らんできた夕方の空が見えた。

この前も思ったけれど、雪夜くんは輪郭がきれいだ。

特に横顔の鼻筋から顎にかけてのラインとか。


そんなことを考えながらぼんやりと見ていると、


「………?」


突然、雪夜くんが顔をあげた。

ぱっと視線が絡み合う。


慌ててそっぽを向こうとしたのに、なぜか、少しも目を逸らすことができなかった。


「……見るなよ」


雪夜くんがぽつりと言って、再び視線を落とす。

ごめん、と小さくつぶやいて、私もノートに向き直った。


でも、少しも集中できない。