でも、難しいけれど、本当のことだと思った。


他人の気持ちは理解できない。

人によって、性格も考え方も、生まれ育った環境も、積んできた経験も、全てが違うのだから、当然だ。

同じものを見ても、同じものを聞いても、思うことはそれぞれ違うのだ。


だけど、だからこそ、『理解できない』ということを知った上で人と関わることが大事なのだ。


「……すごい」


感激のあまり小さく拍手をすると、染川さんと三浦くんが笑った。

遠藤くんはまた窓の外に目を向けていたけれど、その横顔は、もう冷たくは見えなかった。


私と遠藤くんは違う人間だから、遠藤くんには私の気持ちは分からない。

無視されて、素っ気なくされて、私がどれほど悲しかったか、きっと遠藤くんは分かっていない。


でも、私だって多分、遠藤くんの気持ちを理解できていないのだ。


「……ごめん」


小さな囁きに、私は驚いて目をあげた。

声の主は遠藤くんだ。


「……そういうつもりじゃなかったんだ。嫌いとかじゃなくて、ただ……お前とはあんまり話したくない」


染川さんが「結局、話したくないわけ!?」とつっこんだけれど、もう私は悲しくはなかった。


「……嫌な思いさせて、悪かった」


と少し恥ずかしそうに呟く遠藤くんには、きっと何か私には理解できない思いがあるのだと分かったから。


でも、いつか、私たちの間の壁が、もう少しだけ低くなってくれるといいな。

だって、せっかく同じクラスになれたんだから。


いつかは、きっと。