「ほんと? よかった。じゃ、これからは美冬って呼ばせてね」


染川さんがにっこりと笑いかけてくれる。

嬉しくて頬が熱くなるのを感じながら、私はこくりと頷いた。


すると三浦くんが、「それ、いいな」と唐突に言った。


「せっかくこうやって四人で勉強会やることになったんだからさ、なんつうか、特別感欲しいよな」

「特別感?」


染川さんがきょとんとした表情で訊ね返すと、三浦くんが深く頷いた。


「そう、特別感。だって、この四人が集まったのって、奇跡って言うか、運命だろ」


三浦くんはにっと笑って、私と遠藤くんを交互に見る。


「ああ、なんか分かるかも」と染川さんが頷いた。


「だろ? だからさ、俺ら、これから名前で呼び合うことにしないか?」


――名前で呼び合う。

それは、私みたいに人付き合いの苦手な性格の人間からしたら、とてもハードルが高い。


私が乗り気でないことに気づいたのか、三浦くんがさらに言葉を続ける。


「俺、思うんだけどさ。名字って、いつ変わっちゃうか分かんないだろ? でも、下の名前は変わらないから、名前で呼び合ったほうが、なんつうか、ずっと続く関係っていうか……」


言葉を選ぶようにゆっくりと話す三浦くんを、遠藤くんがじっと見つめていた。