ええーっ、とみんなが悲鳴をあげるのを満足げに見渡しながら、先生がプリントを配っていく。

前から回ってきたそれを見てみると、『一年生ゴールデンウィーク課題』と書いてあった。


「マジかよー、しかもめっちゃ多いし!」


三浦くんが絶望的な声で言うと、みんなが同調した。

先生が肩をすくめてそれに答える。


「だから少し早めに配ってやってるんだろうが。今日から始めればいいんだよ」

「ええー?」

「あのな、ゴールデンウィーク明けたら十日もしないうちに中間テストだからな? 課題はテスト範囲の勉強になるんだから、しっかりやれよ」


そこまで言ってから、先生が「あ、そうだ」と何か思いついたように手を打った。


「おい、遠藤」


先生が突然こちらに顔を向けて、遠藤くんを呼んだ。

呼ばれた張本人は、ちらりと視線だけを向ける。


「お前、このままじゃ中間テスト、やばいだろう。試験範囲、ほとんど授業に出てないわけだから」


先生が心配そうに言うけれど、遠藤くん自身は聞いているのだかいないのだか、無言のままだ。

先生は遠藤くんのそんな反応にも慣れ始めたようで、彼から視線をはずし、クラスのみんなをぐるりと見回した。


「ええと、そうだな……三浦と、染川と……」


何の話だろう、と首を傾げていると、先生がこちらを見て動きを止めた。


「あと、霧原」


私は、え、と声にならない声をあげる。

唐突に名前を呼ばれて、どきりとしてしまった。