そして、六時間目の授業が終わって、終礼の時間。

鞄に教科書やノートをしまって帰り支度をしていると、秋田先生が教室に入ってきた。


先生が前の席の子と会話を始めたので、何気なくちらりと隣を見ると、遠藤くんは相変わらず窓の外に顔を向けている。

彼は、授業中も休み時間も、ずっとこんな様子だ。

誰に話しかけられても無愛想で上の空だし、昼休みだって、どこかにふらりと出ていったきり、午後の授業が始まるまで戻って来なかった。

クラスの皆も諦めて、遠藤くんには話しかけなくなった。


登校二日目にして、彼は『変わり者の一匹狼』というレッテルを貼られてしまったらしい。

クラスに馴染まず、ひとりだけ違う次元にいるかのように、飄々としている。


でも、なぜだか、彼はそこにいるだけで、まわりの関心を引きつけてしまうような、独特の雰囲気があった。

私も同じで、無視されると分かっているのに、何度も遠藤くんのほうを見てしまうのだ。



「さて、もうすぐゴールデンウィークだな」


先生が突然話を始めたので、私も視線を前に戻す。


「待ってました、ゴールデンウィーク!」


三浦くんがおどけた調子で言うと、みんなも「いえーい」とか、「どっか遊び行こうよ」とか歓声をあげ始めた。

それを制するように片手を挙げ、先生がにんまりと笑う。


「甘いな、お前らは」

「え? なんで?」

「ここは進学校だぞ? ゴールデンウィークだからって遊ばせるわけないだろう」