そういえば、遠藤くんの不登校の理由は何だったんだろう。

彼が『幽霊』だったときは、いじめを受けてしまって学校が怖くなったのかな、と想像していたけれど、本人を見たら、そういうふうには見えなかった。


「おい、遠藤。大丈夫か?」


遠藤くんが何も答えなかったので、聞こえなかったと思ったのか、先生がもう一度くりかえす。

すると遠藤くんは、「は?」と低くうなって先生に目を向けた。


「何の話ですか」


不機嫌そうに言い返されて、先生が目を丸くする。


「いや、だから……」

「ちゃんと学校来てんだから、何も文句ないでしょう」


遠藤くんは先生の言葉を遮るように言って、すたすたと歩き出した。


「……それもそうだな」


聞きようによっては、先生に対してかなり失礼な言い方だったけれど、秋田先生は基本的に穏やかで優しいので、気にした様子もなく頷いた。

でも、クラスのみんなは唖然として遠藤くんを見つめている。


当然だ。

うちの高校は進学校で、おとなしい生徒が多い。

先生に対して反抗的な態度をとるような子はいないのだ。