きっと、雪夜くんはずっと罪悪感を抱きながら生きていくことになるんだろう。


私と一緒にいることを、一点の曇りもなく幸せだと思うことは、彼にとってはとても難しいんだろう。

もしかしたらずっと、『ごめん』と言い続けるのかもしれない。


私たちは傷つけながら、傷つきながら、苦しめながら、苦しみながら、生きていくことになるのかもしれない。


それでもいい。


「私は、雪夜くんの側にいられるだけで、幸せだから……」


だって、こんなにも私を愛してくれる人は、雪夜くんしかいない。

こんなにも私が愛しく思う人は、雪夜くんしかいない。


だから、私は幸せだ。


雪夜くんの両手がそっと背中から離れて、ゆっくりと私の頬を包んだ。


悲しそうに、でも嬉しそうに、彼は微笑んでいる。


「ありがとう、美冬」


美しい音を奏でる指が、大切なものに触れるように私の頬を撫でる。

それだけで私は、泣きたいくらい満ち足りた気持ちになる。


「一緒に、いてほしい。俺が守るから……」

「私も、雪夜くんを守るよ」


彼がふっと笑みを洩らした。


「頼もしいな」

「大切なものがあると、人は強くなるんだよ」

「そうか」


雪夜くんはおかしそうに笑った。


きっと、つらいことや悲しいことが、これからもたくさん待っているんだろう。


それでも、きみを愛してる。

この優しい笑顔を守るためなら、私はなんでもできる。


それはたぶん、きみも同じなんだよね。


だからきっと、私たちは大丈夫。



雲間から射しはじめた銀色の月明かりの中で、私たちは口づけを交わした。





*Fin.