雪夜くんは何も言わない。
私は「雪夜くん」とさらに呼んだ。
今まで何度、この名前を口にしたのだろうか。
きっと私は、世界でいちばんたくさん、この名前を呼んでいる。
そしてきっと、これからも。
「ねえ、会いたい。今どこにいるの?」
『………』
「じゃあ、会いに来て」
あの教会に、と続ける前に、ぷつりと電話が切れた。
ツー、ツー、と冷ややかな電子音が耳の中にこだまする。
苦しくなって、細く息を吐き出した。
やっぱり、だめなのかな。
雪夜くんには私の想いは伝わらないのかな。
側にいさせてくれるだけでいいのに、それさえも雪夜くんにとっては痛みでしかないのかな。
雪夜くんを傷つけたくない。
でも、抱きしめたい。
どうしよう。
どうすればつたえられる?
私は重い足取りで、薄く雪の積もった坂道をのぼっていく。
雪に覆われた街は、信じられないほど静かだ。
あらゆる音が雪に吸い込まれてしまったように、冷たい静けさに満ちている。
その中で、たったひとつだけ、私の耳に忍びこんでくる音があった。
私は目を見開いて顔をあげる。
雪で真っ白に染まった細い坂道の上のほうから、その音は降ってきた。
どくんと心臓が踊った。
雪に足をとられながら、私は駆け出す。
私は「雪夜くん」とさらに呼んだ。
今まで何度、この名前を口にしたのだろうか。
きっと私は、世界でいちばんたくさん、この名前を呼んでいる。
そしてきっと、これからも。
「ねえ、会いたい。今どこにいるの?」
『………』
「じゃあ、会いに来て」
あの教会に、と続ける前に、ぷつりと電話が切れた。
ツー、ツー、と冷ややかな電子音が耳の中にこだまする。
苦しくなって、細く息を吐き出した。
やっぱり、だめなのかな。
雪夜くんには私の想いは伝わらないのかな。
側にいさせてくれるだけでいいのに、それさえも雪夜くんにとっては痛みでしかないのかな。
雪夜くんを傷つけたくない。
でも、抱きしめたい。
どうしよう。
どうすればつたえられる?
私は重い足取りで、薄く雪の積もった坂道をのぼっていく。
雪に覆われた街は、信じられないほど静かだ。
あらゆる音が雪に吸い込まれてしまったように、冷たい静けさに満ちている。
その中で、たったひとつだけ、私の耳に忍びこんでくる音があった。
私は目を見開いて顔をあげる。
雪で真っ白に染まった細い坂道の上のほうから、その音は降ってきた。
どくんと心臓が踊った。
雪に足をとられながら、私は駆け出す。