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私はお父さんに見送られて家を出た。
いつの間にか雪が降り始めている。
今年初めての雪だ。
ゆっくりと舞い落ちてきた雪は、私の頬にふわりと優しく触れて、すっと馴染むように溶けて消えていった。
ガードレールに薄く積もり始めた雪に触れると、真綿のように柔らかい。
雪夜くんみたい、と思った。
お母さんの手紙の言葉を、胸の中で何度も反芻する。
それだけで、冬の夜の寒さなんて感じないほど、私の心はぽかぽかと温かくなった。
お母さん。
私を愛し続けてくれてありがとう。
お母さんからもらったたくさんの愛は、きっと私の中にいっぱい、いっぱいにつまってる。
溢れそうなほど。
だからこんなに彼のことが愛しいんだね。
私の中から溢れた愛は、全て彼に注がれる。
お母さんからもらった愛を、今度は私が彼に注ぐんだ。
誰よりも寂しくて悲しくて、誰よりも強くて優しい彼に。
罪の意識に囚われて苦しみ続けてきた彼を、本当の意味で赦して解放してあげられるのは、きっと私だけだから。
だから私は、彼を抱きしめてあげたい。
もう苦しまなくていいんだよ、って。
雪夜くんを苦しみから救えるのは、私だけなんだ。