「ごめんな、美冬……。お前の恋を心から応援してやれなくて。お前を幸せにしてやりたいと思っていたのに、お前の好きな人と無理やり引き離すような馬鹿なことをしてしまって……父さんを許してくれ」


お父さんは私の肩をつかんでうなだれながら、何度も「ごめん」と謝った。


「私こそごめんね、お父さん。雪夜くんのこと好きになっちゃって……」


私は頬を濡らす涙を両手でぬぐう。

目をあげると、写真立ての中で優しく微笑むお母さんと目があった。


「お父さん辛い思いさせちゃうのは分かってるけど……でも、私はやっぱり雪夜くんが……」

「分かってるよ。美冬が生半可な気持ちで人を好きになるような子じゃないことは、父さんがいちばん分かってる」


お父さんの大きな手が、私の頭を何度も撫でた。

私を守り育ててくれた、大好きな手だ。


「父さんはきっと、自分の中の憎しみや恨みを乗り越えてみせるよ。いつまでも過去に捕らわれていないで、許せる人間になる。だから、美冬」


お父さんの腕の中にふわりと包まれた。

幼い頃、こうやってお父さんの胸に抱かれるのが大好きだったな、と思い出した。


「――行きなさい、彼のところに。父さんのことは考えなくていいから、お前がしたいようにしなさい」


私は涙を流しながら、うん、と頷いた。


「きっと母さんもそう願っているはずだ」