「雪夜くんはあの日、大怪我をして血まみれで……真っ青な顔をして、それなのに、雪の降る中お前を抱きかかえてここまで連れて帰って来てくれた。驚いて家に上げようとしたら、自分にはそんな資格はないと拒んで、決して中に入ろうとはしなかった」


その光景を思い描くと、胸が苦しくなった。


雪夜くんは一体どれだけの秘密を抱えているんだろう。

私には言わずに隠し続けていることが、どれほどたくさんあるんだろう。


それに、雪夜くんが私に秘めていることは、どれも私を傷つけないための、私を守るためのものだ。


また涙が込み上げてきた。

雪夜くんの思いが痛くて切なくて、苦しい。


「しかも、彼は傷だらけの身体で、雪の積もった玄関先で土下座をしたんだよ……。『美冬さんを危険な目に遭わせてしまってすみませんでした』、『もう二度と美冬さんとは会わないし、無関係な人間になるから安心してください』と。そして、『美冬さんの前で俺のことは決して話さないでください』と何度も念を押していた」


お父さんは両手で顔を覆った。


「その姿を見た瞬間に、おれは自分がひどく愚かで、彼の本当の心を見抜くことができていなかったことに気がついて、後悔に襲われた。でも、そのときにはもう遅かった……お前たちはもう終わってしまったのだと知って、なんてことをしてしまったんだと悔やんだよ」


頬を伝う涙が温かかった。

雪夜くん、雪夜くん、と心の中で何度も叫んだ。