雪夜くんが消えてしまいそうな気がした。

寂しさと悲しみ、心に深く刻まれた傷を抱えて、そのまま倒れてしまいそうな気がした。


気がついたら、涙が溢れていた。

ぽろぽろと止めどなく溢れてきて、頬を伝い、唇を濡らし、顎の先から雫になって落ちていく。


嗚咽が洩れないように堪えるのに必死だった。

右手で口許をおさえながら泣いていると、視線を感じた。

隣を見ると、雪夜くんが目を見開いて驚いたように私を見ている。


映画で泣いていると思ってくれますように。

そう思ったけれど、まだ半分ほどしか進んでいない映画は、泣くようなシーンではなさそうだった。


しばらく私の様子を窺うように見ていた雪夜くんは、すっと視線を戻す。

私も前に向き直った。


そのとき、ふいに、膝の上に置いていた左手に触れるものを感じた。

目を落とすと、となりから伸ばされた雪夜くんの右手に包み込まれていた。


慰めるように、ぎゅっと。

温かくて、優しい。


でも、切なくて苦しい。

涙はおさまるどころか、次々と溢れ出す。


雪夜くんは途方に暮れたようにこちらを見つめていたけれど、唐突に私の手を自分の膝の上に引き寄せて、両手で包み込んだ。

その優しい温もりは、映画が終わって照明がつくまで、私が泣き止むまで続いた。