聞いた瞬間、「えっ」と声を上げてしまった。


「入院? 雪夜くんが? どうして?」


驚いて嵐くんに訊ねると、彼の方がもっと驚いた顔をした。


「えっ、美冬、それは思い出してなかったの?」

「うん、知らない。雪夜くんが入院してたなんて……。病気?」


もしかして雪夜くんは、何か病気にかかっていたのだろうか。

入院しなければいけないほど大きな病気?


不安に包まれている私に、嵐くんはまだ驚きの余韻を残した表情で、「違うよ」と首を振った。


「怪我だよ」

「え……怪我?」

「うん。美冬と一緒にいたときに事故に遭ったんだって聞いてたから、てっきり美冬も知ってると思ってたんだけど」


呆然としている私に、嵐くんが話してくれた。

雪夜くんは、見舞いに来た嵐くんにこう言っていたのだそうだ。


『美冬といるときに事故に遭って、俺は背中と腕に怪我をした。美冬は頭を打って記憶をなくしている』


そして、私と雪夜くんが受験する高校と同じ学校を受けることになっていた嵐くんに、こう頼んだ。


『美冬は俺のことを全て忘れた。俺は美冬にとってはいないほうがいい存在だから、忘れていてもらったほうが助かる。だから、もし美冬と高校で会っても絶対に知らないふりをしてくれ。美冬が俺のことを思い出したりしないように、協力してほしい』


嵐くんは苦しそうな表情で言った。


「まさかあいつの親の事故の被害者が、美冬のお母さんだったなんてな……。聞いたときは俺もつらかった。なんて残酷な運命なんだろうって……」