「素直じゃないし頑固だから、自分の気持ち隠してばっかなんだよ」

「………」

「もう時効だから、全部ぶっちゃけちゃうけど……」


悪戯っぽい顔でそう前置きをして、嵐くんは昔の話をしてくれた。


中学生になってからも、雪夜くんと嵐くんは定期的に連絡をとっていた。

あるとき雪夜くんが『好きな子ができた』と突然打ち明けてきて、嵐くんはかなり驚いたという。

彼は自分の話をすることがほとんどなかったし、恋愛の話をするのは初めてだったから。

それだけ本気なんだと嵐くんは思って、応援していた。


「あの雪夜が女の子と二人で話すなんて、それ自体俺には想像できなかったけど、まさか付き合いだすなんて、開いた口が塞がらないって感じだったよ」


それで雪夜くんの相手を見てみたくなった嵐くんは、しらとり園に遊びに来て、ピアノを弾く私をこっそり覗いていたこともあったらしい。


「うそ、全然気づかなかった。私たち、高校が初対面じゃなかったんだね」

「そうだよ。まあ、俺が一方的に知ってただけだからね」


だから嵐くんは、入学式の日、教室で私を見て、すぐに気づいたという。


「声かけようかと思ったけど、雪夜から止められてたから」

「そうなの?」


そう言ってから、ふと気がついた。

入学したばかりのころ、雪夜くんは学校に来ていなかった。

それはどうしてなんだろう。


その疑問に対する答えは、すぐに嵐くんが教えてくれた。


「あいつが入院してる病院に見舞いに行ったとき、高校で美冬に会っても、絶対に声かけたりするなって言われて。雪夜のことも知らないふりしろって」