そうやって周りをごまかして、自分の気持ちもごまかしていれば、きっと時間が解決してくれるだろう、と思った。

雪夜くんへの思いは時間が消し去ってくれるだろう、と思った。


……思っていたのに、どうしても彼のことが頭から離れない。


いつも雪夜くんを目で追ってしまう。

どこかから彼の声が聞こえると、何も手につかなくなる。

気がついたら雪夜くんのことを考えていて、夢にまで見た。


でも、だめだ。

私の存在は雪夜くんを苦しめるだけだから。


そう自分に言い聞かせて、少しずつ、少しずつ、私は『友達のふり』が上手くなっていった。


秋が深まり、銀杏の葉も散って、また冬がやってきた。


「うー、寒い!」


校舎から出た瞬間、ぐるぐる巻きにしたマフラーに顔を埋めて、梨花ちゃんが肩をすくめる。

私は凍える指に息を吐きかけながら頷く。


「もう十二月だもんね」

「だよねー。もうすぐ高一も終わりか。あっという間だな」

「こんな感じで高校生活なんてすぐ終わっちゃうんだろうね」

「いやだー……あ、ごめんちょっと電話」


受け答えをする梨花ちゃんの声のトーンで、嵐くんからの電話だと分かる。


一ヶ月くらい前に二人は付き合いはじめた。

恥ずかしがってあまり詳しいことは教えてくれないけれど、嵐くんのほうから告白したらしい。

梨花ちゃんは泣きながら喜んでいた。


付き合う前から仲が良かったけれど、前よりも距離が縮まって、二人の間には落ち着いた雰囲気が流れている。