「……俺は、美冬といると、苦しい」


苦悩に満ちた顔で、絞り出すような声で雪夜くんは囁いた。


「美冬を傷つけるしかない自分の存在が、苦しいんだ……」


私は雪夜くんを苦しめたくない。

そんな顔はさせたくない。


雪夜くんを傷つけたり、苦しめたり、悲しまたりするものから、守ってあげたい。

そう思っていたのに。


私といることで、君は苦しむの?

私といることで、君は悲しい思いをするの?


それなら私は君とは一緒にいられない。


――私は雪夜くんの言葉に頷くしかなかった。



どうしてだろう。


私の思いと雪夜くんの思いは、とても似ているような気がする。

苦しめたくない、守りたい。


それなのに、私たちが望むことは、全く正反対の形をとるのだ。


同じことを思っているはずなのに、私たちの言葉は互いにすれ違い、理解し合うことができない。



私は雪夜くんに何も言えないまま、彼に手を振って別れた。


私はいつも、自分の気持ちをひとにうまく伝えることができない。