「雪夜くん……?」


声をかけても、確かめるように触れても、ぴくりとも反応しない。


雪夜くんの背中は、天井から落ちてきた折れた梁が刺さってぱっくりと割れていた。

赤黒い血がどくどくと流れていく。


ついさっきまで、私がこの怪我を負っていたはずだった。

死を覚悟するほどの怪我。


「……雪夜くん」


震える指で雪夜くんの前髪をかきわけると、ぞっとするくらい青白い頬と固く閉じた瞼が現れて、息を呑んだ。


なんとか呼吸を整えて、雪夜くんの頬に触れる。


あまりの冷たさに背筋が凍った。

命を感じさせない冷たさだった。


「嘘でしょ……雪夜くん、どうして……」


私の口からは白い息が洩れている。

でも、雪夜くんの唇は薄く開いたままで、わずかな息さえも吐き出してはいなかった。


ここにこうして冷たい身体で倒れているのは私だったはずなのに。

それなのに、どうして、雪夜くんがこんなことになってるの。


呆然と座り込んでいたら、視界の端にきらりと光るものが見えた。


首を巡らせて、そこにひっそりとそびえる銀色の十字架を目でとらえる。

十字架の周りには、崩れた天井からはらはらと舞い落ちてくる粉雪が、月明かりを受けて煌めいていた。


私は十字架を見つめて、「かみさま」と呟いた。


冷たくなった雪夜くんの身体をきつく抱きしめて、祈った。


「神様、どうか……」



私の全てを懸けて、神に祈った。