「雪夜くんは悪くないよ……。私のお母さんは雪夜くんのせいで死んだわけじゃない。雪夜くんが奪ったわけじゃない」


言葉を絞り出したけれど、雪夜くんは虚ろな目のままだった。

どんなに言葉を尽くしても、伝わらなかった。


だから私は、同じところに立とうと思った。


「雪夜くんに責任があるっていうなら、私だって同じだよ。あの日、お母さんは私のために買い物に行ってくれてたの」


本当のことだった。

あんな夜遅くにお母さんが買い物に出るなんて、普段では考えられないことだった。

でも、あの日はたまたま外に出て、それは私のためだったのだ。


あの日は、お父さんの仕事が休みだったので、少し早いけれど私の誕生日パーティをする予定になっていた。

お母さんが昼間のうちに買ってきてくれていたケーキをいざ食べようとしたら、ロウソクが付いていなかった。


馬鹿で我儘な私は、ロウソクがないのが悲しくて泣いてしまった。

そしたらお母さんは、『コンビニで買ってくるから待っててね』と出ていってしまった。


その途中に、お母さんは事故に遭ってしまったのだ。


「だからあの事故は、私のせいでもあるんだよ」


お母さんが死んでしまったとき、幼心にも私は、自分のせいだと思った。

でも、自分を責め続けて生きてこなくてすんだのは、お父さんのおかげだ。

お父さんは私に、『美冬は悪くない、美冬のせいじゃない』と言い聞かせてくれたから。


でも、雪夜くんには、そうやって彼を罪悪感から解放してくれる存在がいなかったのだ。