「どうして謝るの? 雪夜くんは悪くない。事故には関係ないのに」

「違うんだ、俺が悪いんだよ。あの事故は、父親が事故を起こしたのは、俺のせいなんだ……」


どうしてそんなことを言うのか分からなかった。

でも、続きを聞いて、私は彼の絶望と苦しみの深さを思い知った。


「あの事故の日、父さんは出張に行ってて、仕事が遅くなるからホテルに泊まって次の日に帰ってくる予定だった。でもその頃父さんはすごく仕事が忙しくて、俺は遊んでもらえないのが寂しくて、だから、帰ってきてほしいって我儘を言ったんだ……」


雪夜くんは虚ろな眼差しでぼんやりと天井を見上げた。

その横顔が窓から射し込む月の光に照らされていた。


「父さんは仕事が終わってから車を運転してこっちへ向かってた。きっとすごく疲れてて……だから、うとうとしてしまったんだ。それで、買い物帰りの美冬の母親を……轢いて……」


雪夜くんの顔が苦しげに歪んだ。


「……俺があんな我儘を言わなかったら……っ、そしたら、美冬の母親が死ぬことはなかった。俺がお前の大事なものを奪ったんだ……!」


罪悪感、という言葉が胸に浮かんだ。

彼が私に別れを告げたのは、罪悪感に苦しんでいたからだったのだ。


仕方がないことなのに、雪夜くんには罪はないのに、それでも自分を責めて苦しんでいた。


たぶん、これまで生きてきた間、ずっと。

雪夜くんが時々、とても寂しそうで悲しそうな顔をしていたのは、きっとそれが原因だったのだ。