それでも私は、雪夜くんのことが好きだった。

嫌いになんてなるわけがない。


彼は私に何も教えずに、ひとりで全てを抱え込んで私の前から消えようとしたのだ。

きっと、私を傷つけないために。苦しめないために。

なんて優しい人なんだろう、と涙がこみあげてきた。


でも、残酷すぎる重い真実をひとりで抱えて苦しんでいるはずの雪夜くんを放っておくなんて、私にはできなかった。


このまま会えないなんて、このまま終わりになるなんて、耐えられない。


そんな衝動に突き動かされて、数日経ったある日の放課後、私はお父さんには内緒で雪夜くんに会いに行った。


雪夜くんは驚いた顔をして、「なんで来たんだよ」と呻いたけれど、私が「最後にどうしても会って話したかったの」と言ったら、一緒に外へ出てくれた。


二月の末で、ひどく寒い日だった。

前の日までに降った大雪のせいで、あちこちにうず高く雪が積もっていた。


ちらちらと粉雪が降る中、私たちは雪道を踏みしめ、白い息を吐きながら、いつもの教会へと向かった。

教会の屋根にも分厚い雪が積もっていた。


中に入ると、私は雪夜くんに全てを告げた。

お母さんの事故のこと、雪夜くんと私の関係、全てを知ったことを。


雪夜くんは苦しげに顔を歪めて、「知ってほしくなかった」と項垂れたあと、「ごめん」と呟いた。


「美冬の母親を奪って、ごめん」と。