頭が真っ白になった。


別れを告げられたときよりも、もっともっと深くて、どうしようもない絶望だった。


雪夜くんは、知ってしまったのだ。

あまりにも残酷で、つらくて苦しい、悲しい真実を。


私には家族がいるから、何も言わなくても支えてくれる人がいるから、きっとこの残酷な事実に耐えられるだろう。


でも、雪夜くんは?

彼には家族がいない。

施設の人たちがいるけれど、彼はたぶん、周りに心配をかけるようなことは絶対にしないだろう。


雪夜くんは今、きっと誰に打ち明けることもなく、たったひとりきりで、残酷な真実に苦しんでいるはずだ。

孤独の中で、底の見えない絶望に覆われているはずだ。


「……雪夜くんの……家族は?」


どうして彼は今、施設にいるのだろう。

あの事故のころは確かに、彼にはお父さんもお母さんもいたはずなのに。


「……亡くなっているそうだ。昨日、彼がそう言っていた」


お父さんの答えに衝撃を受ける。


「え? 二人とも?」

「ああ。あの事故の後しばらく経ってから、親子三人で車ごと海に飛び込んで……無理心中だよ」


お父さんは両手で顔を覆って項垂れた。


「彼は何も言わなかったが、たぶん、美佐子を死なせたことと無関係ではないだろう。父親も母親も死んだが、彼だけは……生き残ったらしい」