何時間も経ってから、お父さんに肩を揺すられて我に返った。


どうしたんだ、と心配そうに言われて、その瞬間に涙が溢れて止まらなくなった。

嗚咽をあげながら、雪夜くんに別れを告げられたことを伝えた。


するとお父さんは、「それがいい」と低く言った。


「そうしなさい。彼とは別れたほうがいい」


涙が止まるほどに驚いた。

お父さんは子供のプライベートに無闇に口を出すような人じゃない。


「お父さん……どうしてそんなこと言うの……?」


唖然としながら呟いたら、お父さんは苦しげに眉をひそめて顔を背けた。


おかしい、と思った。

お父さんはなにか知っているのだ、と直感した。


考えを巡らせて、あることに思い当たった。


昨日、お父さんは行き先も告げずにどこかへ出かけて、何時間も帰らなかった。

そんなことは珍しかったので、不審に思った。


そして、雪夜くんも昨日、『急に用事が入って会えなくなった』と言って私との予定をキャンセルした。

そういうこともあるだろうとは思ったものの、そんなことは初めてのことだったし、夜になっても電話もメールも来なくて、訝しく思った。

会えなかった日、彼はいつも電話をくれていたから。


無関係に思えていた点と点がつながった。


「……お父さん。もしかして、昨日、雪夜くんと会った?」


確信があった。

案の定、お父さんはばつが悪そうな表情で唇を噛んだ。