「……雪夜くんがくれたものは、ひとつ残らず、大事に大事にとってたよ。嬉しくて嬉しくて、何度も宝箱から出して眺めてた」


雪夜くんが顔を上げる。

薄く唇を開いたまま私をまっすぐに見つめていた淡い色の瞳から、ぽろりと涙がこぼれ落ちた。


ひとつ、ふたつ、とこぼれる涙の雫。

なんて綺麗なんだろう。


指先ですくうと、雪夜くんは俯いた。


「……馬鹿だな、美冬。忘れたままでいれば、お前は幸せになれたのに」


私は「違うよ」と必死に否定する。そんなはずない。


「雪夜くんを忘れて、幸せになんかなれるわけない」

「そんなわけないだろ。忘れたほうがいいに決まってんだろ」


雪夜くんは力なく首を横に振る。


「俺なんかと一緒にいたら、美冬は……」

「そんなこと言わないで」


彼に『俺なんか』なんて言い方をしてほしくなかった。

でも、雪夜くんは「ちがう、ちがう」と私の言葉を否定する。


「だめだよ。だって、俺は……」


もうこれ以上言わないで、と訴えても、彼の言葉は止まらない。


「俺と一緒にいたら、美冬はいつか傷つくことになる。絶対に後悔して……不幸になる」


そんなはずないよ。

それは君の思い込みだよ。


だって、私のいちばんの幸せは、君と一緒にいることなんだから。


「――俺じゃ、だめだ。だって俺は、美冬の大事なものを奪ったんだから……」