「いいの? 嵐くん、後で雪夜くんに怒られたりしない?」


前から彼らの間には特別な信頼関係があるような気がしていた。

その二人の仲に亀裂が入るようなことは避けたかった。


すると嵐くんは「心配しないで」と笑う。


「美冬と雪夜のことは教えてあげられないけど、でも、俺はさ、二人のこと、なんて言うかな……応援してるんだよ」


私を見つめる嵐くんの目は、驚くほど真剣だった。


「二人には一緒にいてほしい。雪夜のことを本当の意味で救えるのは、美冬しかいないから……」


雪夜くんを、救う?

私が?


救うって、何から?


分からないことだらけだったけれど、嵐くんがそれ以上教えてくれるつもりがなさそうだったので、私は黙ったままでいた。


「俺ができるのは、美冬があいつのこと思い出せるように、ヒントをあげることだけ」

「ヒント?」

「そう。しらとり園、っていう施設のこと」

「しらとり園……?」


どこかで聞いたことがある気がした。

でも、思い出せない。


「それって、どこにあるの?」

「白取町だよ」


清崎町の隣町だった。

ここからそう遠くはない。

そこに行けば、何かが分かるのだろうか。


「しらとり園は、児童養護施設だよ。色んな事情で親と暮らせない子供たちが、そこで施設のスタッフにサポートしてもらいながら生活してる」


首を傾げている私に、嵐くんが言った。


「雪夜と俺は……そこで一緒に育ったんだ。俺は小学生の頃に今の親に養子として引き取られたけど、雪夜はまだそこで暮らしてるよ」