夢の中にいるようにふわふわとした感覚でぼんやりしていて、はっと我に返ったら、周りを歓声と拍手に包まれていた。

それで、彼らのライブが終わったのだと気がつく。


ステージの上の雪夜くんは、一度も客席のほうを見ないまま、機材を持って足早に舞台袖へと降りていく。


彼が向かったほうへと歩き出そうとしたとき、背中をぽんっと叩かれた。

振り向くと、笑顔の梨花ちゃんが立っていた。


「美冬も前に来てたんだ」

「……あ、うん」

「雪夜、めっちゃ上手かったね! それにかっこよかったし! 惚れ直しちゃったんじゃない?」


おどけた調子で言う梨花ちゃんに、「ごめん、ちょっと用事があるから先にクラス戻っといて」と伝えて、私は体育館の外へ飛び出した。


今は雪夜くんのことしか考えられない。


確かめなきゃ、彼に話を聞かなきゃ。

そのことで頭がいっぱいだった。


舞台袖と直結している出入り口の前に行くと、高橋くんと山内くんが話しているのが目に入った。


「雪夜くんは?」


息せき切って訊ねると、彼らは私の形相に驚いたように振り向いた。


「え……霧原さん? どうしたの、そんな慌てて」

「ねえ、雪夜くんは?」

「遠藤? なんか係があるとか言って、急いで教室に戻ったぞ」