駅で電車を降りて、家まで歩いて15分。

部活には入っていないので、授業が終わってすぐに家路につくと、帰り着くのはまだ明るい時間だ。


道の両側を彩る桜並木を眺めながらゆっくりと歩く。

満開を少し過ぎた桜は、花びらをはらはらと空に放っていた。

このあたりは冬になると何十センチも雪が積もるほど寒くなる地域なので、春の訪れはいつも遅い。


途中でいつものスーパーマーケットに立ち寄る。

まずは入り口の特売品のチラシをチェックしながら晩ごはんの献立を考えるのが日課だ。


今日は合い挽き肉が安いから、久しぶりにハンバーグにしようかな。

きっと佐絵が喜ぶ。


メニューを決めると、入り口すぐの野菜のコーナーに行き、かごの中に必要なものを入れていく。

次にお肉やお魚のコーナー、そして玉子や牛乳、ヨーグルト。


そういえば生姜とみりんが無くなりそうだったな、と思い出して、最後に調味料のコーナーへ行き、チューブ入りのすりおろし生姜と瓶詰めのみりんをかごに入れた。


レジに並んでいる間にスマホをチェックする。

お父さんが『7時には会社を出られそう』とメールを送ってきていた。


返信を打っている間に、ラインの通知が来たので開いてみると、妹の佐絵から『部活のあとミーティングあるからちょっと遅くなる』というメッセージが届いた。


今日はゆっくり作ればいいな、と少しほっとする。