明らかに動揺している私を、梨花ちゃんがにんまりと見つめる。


「美冬ってば、嘘つくの下手すぎ!」

「ええ~……」


情けない声を上げると、梨花ちゃんがこそこそと耳打ちをしてきた。


「雪夜のこと、好きなの?」


直球すぎる訊き方に、さらに顔が熱くなってきて、私は両手で頬を押さえた。

梨花ちゃんは本当にストレートな物言いをする。

そういえば、彼女はアメリカで育ったから、日本人の言葉をオブラートに包んだような言い方は馴染まないのだった。


「あいつのこと気になってるの?」


どう答えればいいか難しくて、少し考えてから口を開く。


「……自分でも、よく分からないの。好きとか、恋愛とか、したことないから」


言いながら、遠い人だかりの中にいる雪夜くんを見つめる。


「好きかどうかは分からないけど……気になる、っていうのは、あるかな」


彼はかすかに微笑みを浮かべて窓辺に寄りかかり、高橋くんの話を聞いている。

背後から射し込む光を受けて、きれいな輪郭が淡く縁取られていた。


「気がついたら雪夜くんのこと見ちゃってるし、少しでも話せると嬉しいし……」


でも、好きかと訊かれると、よく分からない。

家族の好きじゃなくて、恋愛の好き。

それってどういうものなんだろう。


たくさんの本を読んできたし、その中に描かれたたくさんの恋を知っているはずなのに、自分の気持ちはよく分からなかった。


「……いやいやいや、それはもう、好きでしょ。好き決定!」


梨花ちゃんがびしっと私を指差して断言する。